今回は、以下の質問にお答えしますね。
ASDグレーゾーンについて質問させてください。
就活中に、大学のキャリアカウンセラーからASDの可能性を指摘されました。
実際に、私の特徴とASDの特性は似ているところが多くあります。
親にこのことを相談したら、「確かにASDっぽいところはあるけど、育った環境によるものでASDではない。」
と言われました。
大学の校医さんには、「グレーの可能性はある」と言われました。
そもそも、「グレーゾーン」は定型発達であっても育った環境などでASDっぽい特性を持っている人のことなのでしょうか。それとも、軽度の障害なのでしょうか。
もし前者であれば、努力次第で治るのでしょうか。
小学校の通知表は処分しており、親は私がASDである可能性を否定しているので、検査したところで正確な診断は出ないと考えています。
質問者さんは、おそらく就職活動中なのでしょうか?キャリアカウンセラーの方から、ASDの可能性をご指摘されたのですね。
面接対策などをされていたのでしょうか。
また、ASDの特徴についても、近いと感じられているのですね。
- 「グレーゾーン」は定型発達であっても育った環境などでASDっぽい特性を持っている人のことなのでしょうか。それとも、軽度の障害なのでしょうか。
- グレーゾーン / 発達障害は努力次第で治るのでしょうか。
こちらの質問には、ひよこ相談室にご協力いただいている、発達障害当事者の方、社会福祉士の方からお答えしますね。
この記事のポイント
- 発達障害は、「治る」「治らない」の問題ではなく、能力の偏り
- 発達障害グレーゾーンは、制度的、医療的には障害とは言えない
- 発達障害の診断を受けると、適性が理解できるので、診断を受けた方がよい
発達障害は特性であり、治すものではない
まず、グレーゾーンとは、ASD特性を持っているか?という質問のご回答です。
結論から言うと、グレーゾーンは、「発達障害」の特性を持っているということになります。
発達障害には、以下の3種類があります。
- 多動性障害
- 自閉症スペクトラム
- 学習障害
そして、グレーゾーンとは、「発達障害の特性を持っているものの、発達障害と診断できる基準に当てはまらない状態」となります。
図にすると、以下のようになりますね。発達障害とは言えないけど、正常と言えるほど社会生活で不自由がない状態ではないイメージです。
発達障害とは何かというと、「能力の凸凹によって、社会生活で問題が起こっている状態」になります。
ものすごく雑な例になってしましますが、例えば、普通の人の場合、
- コミュニケーション能力:3
- 集中力:3
- マルチタスク能力:3
- タスク管理能力:3
のように、満遍なく能力が割り振られているとします。
ところが発達障害の場合は、
- コミュニケーション能力:5
- 集中力:5
- マルチタスク能力:1
- タスク管理能力:1
のように、能力が凸凹なんです。
社会では、平均的にできることを求められるため、能力の凸凹が多い場合は、社会で苦労しやすいのです。能力の凹凸で社会生活で困っている状態が、「発達障害」になります。
ですので、能力の凸凹により、質問者様が困っていて、その困り度がお医者さんからみても明らかに凸凹のせいだ!と診断した場合は、発達障害になります。
さて、話は戻ります。
グレーゾーンは障害なのか。というご質問ですが、これは医学的な観点からすると、障害とは認められません。
「制度的、医学的な観点」で、障害と認められるということは、すなわち、
- 医師による診断があり、かつ障害者年金などの障害者としての福祉を受けられる
といった状態になります。
ですので、厳密な意味でグレーゾーンは「障害」なのかというと、障害にはなりません。
一方で、現在学生、7月の終わりで就職活動をされていること、また今キャリアカウンセリングを受けられている質問者様のことを考えると、おそらく就職活動に困られているのではないかと思います。
そして就活がASDに近い特性によってうまくいかないのであれば、それは「制度的、医療的には認めらない」ですが、能力の凹凸によるものなので、障害を持っている状態に近いと思います。
質問者様は、「小学校の通知表は処分しており、親は私がASDである可能性を否定しているので、検査したところで正確な診断は出ないと考えています。」とおっしゃられていますが、通知表がなくてもお医者様は多角的にASDの診断材料を分析します。
ですので、通知表がなくても診断を受けることは可能です。
発達障害の診断を受けるべきか否か
質問者様は、すでに親御様に診断を受けるべきか、相談されているのですね。
また、ご両親は診断をうけることを反対されているとのことを伺いました。
ちきんとしては、発達障害の診断を受けるべきかと考えております。
理由としては、以下の通りです。
- 自分の得意、不得意に気付け、よい就職先に出会いやすい
- 様々な社会保障を受けることができる
- クローズド就労、オープン就労の選択肢を得られる
- 発達障害の診断を受けたとしても、隠しておけば特に問題は発生しない
自分の得意、不得意に気付け、よい就職先に出会いやすい
診断をうけ、自分の得意不得意が理解した上で就職すると、自分の特性をうまく生かした就職先に出会えるようになります。
逆に診断を受けないで、働いてから発達障害に気づく場合、実は鬱、適応障害などが併発するケースが多いです。これは、自分の凹凸に全くあっていない仕事についてしまい、そのせいでメンタルがやられてしまうケースが非常に多いからです。
実際にADHDの精神疾患率は、そうではない人の5倍以上多いと言われています。
不得意な仕事につかなくても済むこと、それだけでも診断を受けるメリットは大きいです。
様々な社会保障を受けることができる
次に、発達障害の診断を受けると、障害者手帳をもらうことができます。
例えば、
- 医療費の軽減
- 所得税・住民税の軽減
などがあります。
精神障害者保健福祉手帳とは?取得のメリット・デメリットや申請方法を解説
クローズド就労、オープン就労の選択肢を得られる
実は、発達障害を診断された場合、働き方が増えます。
クローズド就労は、自分自身が発達障害であることを周りに言わず、就職する方法となります。つまり、質問者様の今まで通りの就職することになります。
一方で、オープン就労は、自分自身が発達障害であることを周りに言い、障害者雇用枠で転職活動をすることになります。
クローズド就労
定義 | 自分自身の障害を周りに言わず、就職する方法 |
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メリット | 就職先が多い 障害者雇用枠と比べると年収が高い |
デメリット | 発達障害であることを考慮されないので、苦手な仕事ばかり振られる可能性が高い 周りの障害の理解がない可能性が高い |
オープン就労
定義 | 自分自身の障害を周りにいい、障害者雇用枠で就職する方法 |
---|---|
メリット | 自分自身の特性にあった会社に就職しやすい 障害を持っていることを周りが理解してくれている状態で働けるので、精神的なストレスが軽減する |
デメリット | 障害者雇用枠の仕事は、一般的な仕事と比べると年収が低い |
発達障害の診断を受けたとしても、就職時隠しておけば採用で断られることもない
これは実はあまり知られていないのですが、発達障害の診断を受けたとしても、周りに言わなければ何も問題は起こりません。
仮にクローズド就労(障害を持っていることを言わない)で就職活動をするとしても、言わなければ何も問題は起こりません。
受診をする際のコツ
グレーゾーンかどうかはその時の困りごとの有無によって、医師の判断が揺らぐことも。
なので具体的にASD傾向で困っていて、障害診断をもらい支援を受けたい場合は、過去にあった自身の困りごとをまとめておくのがよいでしょう。
例えば、
- コミュニケーションがうまくとれず学業や仕事に支障が出るエピソード(急な休講や課題変更がわからず単位を落とした、など)
などなど、事前にメモしておくとよいでしょう。
いざ病院で診察を受けた時に、伝えることができずに、医師が正しく診断できないことがあります。
まとめ
ということで、まとめです。
- 発達障害は、「治る」「治らない」の問題ではなく、能力の偏り
- 発達障害グレーゾーンは、制度的、医療的には障害とは言えない
- 発達障害の診断を受けると、適性が理解できるので、診断を受けた方がよい